
エアロゲル複合材とは|断熱性能・構造・用途の概要
シリカエアロゲル複合材は、ナノ多孔質構造を持つシリカエアロゲルを、 ガラス繊維・前酸化繊維・樹脂フィルムなどの基材と組み合わせた高性能断熱素材です。 従来のグラスウールやセラミックファイバーと比較して、極めて低い熱伝導率・優れた難燃性・薄型化による高い設計自由度を実現します。
TKSKでは、用途に応じて以下の3種類の複合材をラインナップしています。
ブランケット(高温断熱材)

SiO₂エアロゲルをガラス繊維に複合化した柔軟なロール断熱材で、650〜1000℃の高温領域に対応します。 工業配管、蒸気ライン、炉体、石油化学設備など、産業用途の高温断熱に最適です。 繊維基材のため曲面追従性が高く、圧縮下でも断熱性能が安定しているのが特徴です。
フィルム(薄膜断熱材)

SiO₂エアロゲル粉末をアクリル系複合材として薄膜化した柔軟フィルムで、電子機器内部の局所断熱に特化しています。 スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、家電など、120℃以下の熱源制御に適しています。 均一な表面性状と薄膜構造により、狭い空間でも貼付け施工が容易です。
フェルト(中温断熱材)

前酸化繊維とSiO₂エアロゲルを複合化した薄型フェルトで、450℃までの中温領域に対応します。 EV電池モジュール間の断熱、車体断熱、プロジェクターや3C家電の熱管理など、圧縮環境下でも安定した断熱性能を発揮します。 前酸化繊維基材により、圧縮・振動環境でも形状保持性が高いのが特徴です。
用途に応じた選定|温度域と使用環境で選ぶ3種類のシリカエアロゲル複合材
シリカエアロゲル複合材は、温度域・設置環境・用途カテゴリによって選定基準が異なります。 特にフィルムは「電子機器内部の局所熱源」という 独立した用途カテゴリであり、 ブランケットやフェルトのような温度軸の連続性には属しません。
以下では、用途に応じた最適な複合材を簡潔に整理します。
高温域(産業設備)|ブランケット
650〜1000℃の高温領域に対応する柔軟なロール断熱材。 工業配管、蒸気ライン、炉体、石油化学設備など、 広い面積を包み込む産業用途の高温断熱に最適です。 曲面追従性が高く、圧縮下でも断熱性能が安定します。
中温域(車載・EV)|フェルト
〜450℃の中温領域に対応する薄型フェルト。 EV電池モジュール間、車体内部、プロジェクターや3C家電など、 圧縮・振動環境での断熱に適しています。 前酸化繊維基材により形状保持性が高く、狭いスペースにも施工可能です。
電子機器内部(局所熱源)|フィルム
〜120℃の局所熱源向けに設計された薄膜断熱材。 スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、家電など、 電子機器内部の熱源制御が主用途であり、 ブランケット・フェルトとは 用途カテゴリそのものが異なります。 薄膜構造により貼付け施工が容易で、狭い空間でも使用できます。
選定の考え方|4つの技術要件から判断する素材選定
シリカエアロゲル複合材の選定は、 温度設計・設置環境・厚み制約・難燃性/安全性 の4つの技術要件を組み合わせて判断します。 単に「何℃まで使えるか」だけではなく、 どの位置で温度を落とすか(ΔT設計)、圧縮や振動の有無、スペース制約、 適用すべき難燃規格や安全基準など、複数の条件が絡み合って最適素材が決まります。
① 温度設計(最高使用温度・温度勾配 ΔT)
素材選定の起点になるのが最高使用温度です。 ブランケットは650〜1000℃の高温域で安定した断熱性能を持ち、 炉体や高温配管など、一次断熱が必要な領域に適しています。 フェルトは〜450℃の中温域で形状保持性と難燃性を両立し、 EV電池モジュール間や車体内部など、二次断熱・局所断熱に向いています。 フィルムは〜120℃の局所熱源向けに設計されており、 CPUや電源モジュール、バッテリー周辺など、電子機器内部の熱源制御に特化しています。
重要なのは、素材の耐熱限界だけでなく、 どこで温度勾配(ΔT)を落とすかという設計方針です。 高温側でブランケットを用いて一次断熱を行い、 中温側でフェルトを用いて二次断熱を行うことで、 設備表面温度やモジュール間温度を安全域まで落とす設計が可能になります。 電子機器では、フィルムによって局所的なピーク温度を抑え、 筐体全体の温度上昇を抑制する設計が求められます。
② 設置環境(圧縮・振動・曲面・スペース制約)
同じ温度条件でも、設置環境によって最適素材は大きく変わります。 ブランケットは繊維基材のため曲面追従性が高く、 大型設備や複雑形状の配管、タンク外面など、広い面積を包み込む用途に適しています。 施工時にある程度の圧縮がかかっても、断熱性能が大きく低下しにくい構造です。
フェルトは前酸化繊維基材により、圧縮・振動環境でも形状と性能を維持しやすく、 EV電池モジュール間や車体内部、家電内部の狭小スペースなど、 “押し込まれる”“挟まれる”環境での断熱に向いています。 振動や衝撃が繰り返し加わる用途でも、長期的に安定した断熱性能が期待できます。
フィルムは薄膜構造で、貼付け施工が前提の素材です。 スマートフォンやタブレット、ウェアラブル機器、家電内部など、 極めて限られたスペースの中で、基板や部品の近傍に直接貼り付けて使うことができます。 圧縮・振動・曲面・スペース制約といった設置環境の条件を整理することで、 3種類の複合材のうち、どれが現場に適しているかが明確になります。
③ 厚み制約(薄型化・スペース効率・熱抵抗の確保)
設計上の厚み制約は、素材選定に直結する重要な要素です。 ブランケットは数mm〜数十mmの厚みで使用されることが多く、 産業設備の表面温度低減や、断熱層として十分な熱抵抗を確保したい場合に適しています。 厚み方向に余裕がある設備では、ブランケットによって安全側に振った設計が可能です。
フェルトは薄型でありながら、エアロゲルの低熱伝導率によって 限られた厚みの中でも必要な熱抵抗を確保しやすい素材です。 EV電池モジュール間や車体内部など、 「数mmしか取れないが、温度差を確保したい」という用途に向いています。
フィルムはさらに薄く、数百µm〜1mm程度の厚みで局所熱源を制御する用途に使われます。 基板上や部品近傍に直接貼り付けることで、 スペース効率を維持しながら、ピーク温度を抑えることができます。 薄型化と熱抵抗の両立が求められる場合、 フェルトやフィルムのような薄膜系複合材が有力な選択肢になります。
④ 難燃性・安全性(UL規格・車載規格・産業安全)
難燃性・安全性は、用途によって要求レベルが大きく異なります。 産業設備向けのブランケットは、高温環境下でも燃え広がりにくく、 設備全体の安全性向上に寄与します。 フェルトは車載・EV用途で求められる難燃性や発煙性の基準を満たすことができ、 電池モジュール間や車体内部での使用に適しています。
フィルムは、UL規格など電子機器向けの難燃基準への適合が可能で、 スマートフォンや家電内部のような、 「発火・発煙を極力抑えたい」環境での使用に向いています。 特に電子機器では、難燃性だけでなく、 発煙性・ガス発生・長期信頼性も重要な評価項目です。
最終的な素材選定では、 適用される規格(UL、車載規格、産業安全基準など)と、 求められる安全レベルを整理したうえで、 ブランケット・フェルト・フィルムの中から最適な組み合わせを検討することになります。
お問い合わせ・技術相談|用途・設計条件に合わせた最適な複合材をご提案します
エアロゲル複合材は、用途・温度域・設置環境・厚み制約・難燃性など、 複数の技術要件が重なって最適素材が決まるため、 「どれを選べばいいか分からない」「条件が複雑で判断が難しい」 というご相談をいただくことが多くあります。
TKSKでは、産業設備・車載・EV・電子機器内部など、 用途ごとの要求仕様に合わせた素材選定と技術提案を行っています。 YIGAO・CGのTDS/SDSに基づく実測値ベースの比較、 温度勾配(ΔT)設計、圧縮・振動環境での性能評価、 厚み制約下での熱抵抗確保、難燃規格への適合性確認など、 具体的な条件に応じた技術的な検討が可能です。
初期検討段階でも、 「温度条件が複雑」「スペースが厳しい」「難燃規格を満たしたい」 といった段階からご相談いただけます。 用途・設計条件をお伺いし、 ブランケット・フェルト・フィルムの中から最適な複合材を選定し、 必要に応じて組み合わせた断熱設計をご提案します。
価格や納期は仕様により変動いたしますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。TDS・SDSなどの技術資料は、ご依頼に応じて提供可能です。